コーヒーブレイクダウン

第15話 東京放浪記 2002.9.11

私は大阪生まれの大阪育ち、生粋の関西人である。しかも、旅行が趣味というわけではないし、東京というところに土地勘は全くない。殆ど未知の世界である。
それでも、ここ数年は出張で関東方面に行く事は結構ある。しかし、大抵は指定の駅から近いか、または目的地までタクシーで行ったり、他の人と一緒に行くということが殆どであった。
そんな中で、9月某日、東京にて、さる講習会に参加することとなった。


その講習会は、「神田明神」内の「明神開館」という所で行われた。同封の略図では、最寄駅はJR秋葉原または御茶ノ水駅で、徒歩6-7分となっている。そんなに難しくはなさそうだし、秋葉原は何度か行ったことがある。まあ、すぐわかるだろう、と軽く考えていた。それが、事件の始まりであるとは・・・


講習会は、朝10:30からである。早朝5時半に起きて、7:00新大阪発の新幹線に乗り、東京駅についたのが9:57、そこから山手線にのり秋葉原到着が10:10頃である。余裕余裕。

さて、この日は東京は大雨であった。持っていた折り畳み傘では、気休めにしかならないほどである。秋葉原の電気街口を出て、足早に歩き出した。濡れないうちに早く着こう。しかし、行けども行けども、それらしい建物はおろか、看板さえない。案内地図を見つけ、探してみるが、ぜんぜん載っていない。現在位置は神田あたりであるから、近いあたりに居るんだろう。地図に載っていない所をみると、神田明神とは、よほど小さい神社に違いない。道行く人に聞いても、「神田明神?さあ、どうやっていくんだろうねえ、知らないねえ」という人ばかりであった。時刻は10:20、多少遅れるかもしれないが、今ならギリギリというところか・・・(地点1)

実は、ここに大きな落とし穴があったのである。後から判ったことであるが、神田明神は、神田とは全く違う場所にあったのだ。よく考えれば、山手線で東京→神田→秋葉原と来たのだから、のっけから逆方向に行っていることは明白なのだが、大阪人の哀しさ、東京の個々の地名は知っていても、位置関係がわからない。例えば、梅田、天王寺、住吉の位置関係を関西人以外で知る人は少ないだろう。


仕方ない、急がば回れ、もとの秋葉原に戻ることにした。このとき、来た道をそのまま帰ればまだ良かったのだが、下手に近道をしたことが致命傷となった。もともと方角を完全に勘違いしているのだから、更に違う方向に行ってしまったのである。あれ?おかしいな、秋葉原ではなく、「地下鉄新御茶ノ水駅」に出てしまった。(地点2)

時刻は10:35である。どこをどう間違って御茶ノ水に来たのかは判らないが、まあいい。ここからなら、神田明神まで5-6分である。かなり服も濡れて来た。急がねば。早足で歩きだしたが、相変わらず方向は勘違いしたままである。行けども行けども、それらしいものはない。東京はビルばかりで見通しがわるいんだろう。時刻は10:45。かなり焦ってきた。(地点3)
これはやはりおかしい。行き過ぎたに違いない。よし、注意しながら引き返してみよう。あれ、新御茶ノ水にまで戻ってしまった。


途方にくれ、通行人に聞いてみる。人のよさそうなおじいさんである。(神社を聞くのだし、通りがかりのサラリーマンに聞くより、地元のお年寄風の人の方が詳しいと思ったのだ)

「神田明神は良く知らないが、この地図で見ると、えーと、お茶の水がこっちで、秋葉原がそっちだから、方角としてはあっちの方角だよ」

と、自信ありそうに答えて頂いた。やっぱり私の考えていた方角は正しい。(実際は全く逆)

時刻は11:00。もう全身びしょ濡れ、服から水滴がポタポタ落ちている。持っていた地図のメモは濡れてグチャグチャである。殆ど駆け足で再度引き返し始めた。どこかで曲がるところを見落としたんだろう。ビルばかりで見通し悪いしなあ。適当な所で聞いてみよう。


10分ほど歩いたが、やはりそれらしい道も看板もない。商店街でおじさんに聞いてみた。(地点4)

「え??神田明神?あんた、全く逆の方角に来ているよ。」
「や、やっぱりそうですか。方角を完全に見失っているもんで。この地図でいくと、今どのへんなんでしょう?」

「ここは、この地図には載ってないよ。そーねー、この辺りだね。今来た道を引き返すと、新御茶ノ水駅があるから、神田川を越えて行くんだよ」

全く逆方向に来ているとの事であるが、もうこうなると誰を信用していいのかわからなくなる。とにかく急がなければならない。またまた来た道を引き返しだした。どうせ講習会はもう始まっているし、半ば開き直りの気分である。


これから先も、多少紆余曲折があったのだが、ようやく明神開館に到着した時は、既に11:30近かった。全身びしょびしょ、服から水が滴っている。いくら大雨とはいえ、台風でもあるまいし、駅から5分の所にずぶ濡れの人がやってきたのだから、受付のお姉さんは、さぞビックリしたことだろう。

前から自分でも方向音痴であることは自覚していたのであるが、まさか、ここまでヒドいとは思っても見なかった。
おかげで、秋葉原、御茶ノ水、神田周辺は、多少詳しくなった。


さて、この話をある人にしたところ、

「わからなくなった時点で、なんでタクシーに乗らなかったの?」

そういえばその通りである。が、貧乏性の上、あせっていた私には、そんな考えはちっとも浮かばなかった。はは。ははは。

あ、講習会に遅刻したことは、上司には内緒ね(笑)

推定最短距離 約500m (秋葉原〜神田明神)
推定放浪距離 約5km (我ながら情けない)

コーヒーブレイクダウン目次に戻る

inserted by FC2 system