コーヒー・ブレイクダウン

第6話 特訓!自転車蟻地獄

Bela息子1号は、年長組である。運動神経は、父親に似て、明らかに良くない。大阪弁で言うところの、どんくさい部類に入る。しかも、乗り物には興味がない様で、オモチャでもロボットや怪獣ばっかりで遊んでいる。息子2号は、自動車や電車が大好きだから、兄弟でも嗜好が全然違う。不思議と言えば不思議である。

ご多分に漏れず、1号は3歳の誕生日に、自転車を買ってもらった。ちょっと練習したが、ちっとも乗れない。すぐに見向きもしなくなった。乗らなくなった自転車はサビだらけである。5歳になって、ようやく補助輪付きではあるが、乗れるようになった。

さて、近所でもちょっと運動神経の良い子は、1号より年下でも、すいすい補助輪なしで自転車に乗っている。さすがに母親が危機感を持ち、練習させるから、教えてやれ、という。

「来年は小学校。小学校に入って自転車にも乗れなかったら恥ずかしいでしょう」

と私に言うのである。


大きな声では言えないが、実は私は小学校に入った時、自転車にまだ乗ることが出来なかったのだ。母親が業を煮やして、朝5時から特訓させられたのだ。それで乗れるようになった。

だから、1号を無理やり自転車の練習させるのは、少し後ろめたい気持ちがあった。しかし、身体を動かすのは良いことだ。練習させてやろう。うん。そこで補助輪を外す事にした。


しかし、これが外れないのである。近所のホームセンターで買ってきた、自転車用のマルチサイズ対応万能スパナで外しにかかった。片側はなんとか外れた。しかし、もう片側は外れない。さび付いているようだ。やむを得ず、片側だけ外して練習開始した。

ヨタヨタ走っては、すぐコケル。まあ、無理もない。擦り傷だらけになる。可愛そうだが、心を鬼にして練習させる。そのうち、倒れないようになった。下り坂で発進の練習をする。何度も坂を押して行っては下ってくる。その姿はいじらしい物がある。大分慣れてきたようで、割とスピードが出るようになった。その時、アクシデント発生!!見事にぶっ倒れて、コンクリートの壁に激突!!大泣きしている。

「おうちに帰る!!」

と泣きわめくので、家内がジュースを買ってきて、必死にその場をごまかした。そんなこんなで、ようやく乗れるようになった。

しかし、乗り方がおかしい。お尻を補助輪のあるほうに傾けて、自転車が倒れないようにバランスを取っているのだ。これではいかん。やっぱり両方外さないとイケナイ!!


次の日曜日、メガネレンチなる新兵器を買ってきて、補助輪を外しにかかる。今度はなんとか外す事が出来た。ついでに、自転車のスタンドを取り付ける。近所の公園に出かけて、練習を開始する。

公園のグラウンドでは大学生ぐらいのサッカーチームが練習試合をやっている。その隅に移動して練習を始めた。ここなら転んでも怪我しないだろう。押してやると、最初は3mも進まないうちに倒れる。何度も繰り返す。足は擦り傷だらけ。

半泣きになり、恨めしそうに私の顔を見ている。

かなりスピードをつけて押してやると、そのままよろよろしながら、50mぐらい走ることが出来た。バンザーイ!!拍手すると、サッカーチームの人も、皆練習の手を止めて拍手してくれた。ヤンヤヤンヤの大喝采である。

よし、1号よ、これでお前は大スターだ!!


さらに次の日曜日。発進の練習である。よろよろしているが、かなり発進できるようになった。少しサドルが低いようで、サドルを上げてやると、すいすい発進出来る。どうもサドルが低くて乗りにくかったようだ。

乗れるようになると現金な物である。「おとーさーん、見て見て」と叫びながら、すいすい乗っている。スピードが乗ってくると、両足を広げてビューンと走っている。さっきまでまともに乗れなかったのに、調子の良い奴である。

その時である。よそ見をしていたのだろう。地面を木の枝で掘り返して遊んでいたBela息子2号に1号がマトモに突っ込んだ。

ガッシャン、どて。ぎゃー。

見ると2号は頭から血を流している。1号もひざ小僧から血が流れている。両者流血の大惨事となってしまった。


そんなこんなで、どうにかBela息子1号は自転車に乗れるようになった。どんくさい所と調子に乗りやすいところは、やっぱり私に似ているのだろうか。

 

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